受験生の保護者の方へ

ご令嬢の進路をお考えの中、化学コースのホームページをご覧くださり誠にありがとうございます。

『理学部の化学コースへ行って、将来いったいどうなるのか?』

 理系志望の女子の受験生の保護者の皆様がお抱えの疑問は、まずこれに尽きるのではないでしょうか。 私どもの化学コースは、充実した教育内容、優れた教授陣、良好な勉学環境を自負しております。しかし、それだけであってはなりません。私どもは

『学生が(年月をかけ、費用もかけて)高等教育を受けるからには、それによって『利益』を受けなければならない』

と考えています。大学時代に魅力的な学問にふれ、楽しい学園生活をおくったというだけでは十分とはいえません。よいところに就職し、経済的に不自由しないだけの高いクオリティーの人生を送るべく、高等教育を受けたことがそれに役立たなければなりません。つまり特に昨今のように経済情勢が厳しい時代にあっては、大学で勉強することが、単に在学中の学問的好奇心を満たすためだけであってはならず、本人の将来の人生における経済的基盤の確保に有利に働くべきです。大学で学問を学ぶこと、それ自体は人間の「知的な自立」を促しますが、青春期を送る大学生はそれ以外にも「経済的に自立し、それによって精神的にも自立」することを課題として抱えています。それら3つの点での自立が、大人の人間になるために必要なことではないかと思います。その意味でも経済的に自立することは大変大事なことです。

「化学」はつぶしのきく学問

 幸いにして「化学」は“つぶし”のきく学問であります。「化学」は机上の空理空論とはほど遠く、大変に「実際的・実践的な」色彩が強い、また実社会に役に立つ応用の芽が惜しみなく包含されている学問です。これは「化学」が成立してきた近代史の中で、錬金術のような現実的な欲求から発展してきた“テクノロジー”がその中に融合されてきたおかげでしょう。例えば「ノーベル化学賞」の授賞対象は、「化学の分野における重要な『発見』あるいは『改良』に対して」であります。ここに『改良』という、役に立つテクノロジーを意味する言葉が入っており、現実の応用に対する成果に対しても授賞されることがわかります。同じくノーベル物理学賞の授賞理由が『発見』に限定されているのとは対照的です。

学修内容やレベル共は世界標準/7割が大学院進学

 私どもの化学コースで学生が学ぶ内容は、現代日本の各分野の製造業を中心とする産業界で就職後に活躍するための基礎となるものであることに間違いありません。また、学修内容やレベルも世界標準のものであり、かつあらゆる理工系分野に共通の普遍的なものです。私どもは、学部4年間と、卒業後に進学する本学の大学院博士前期課程(修士課程)化学専攻の2年間、をあわせた、計「6年間」を、化学系教育の「標準」と考えています。今の時代、理系の職種に就職するためには学部4年間の勉学では足りない面があり、大学院博士前期課程2年間まで研鑚をつむこと(院卒)が多くの場合産業界から要求されています。産業界が院卒を求める理由は、院卒者の専門的な理系スキルや問題解決経験・能力を買っているからです。学部4年間に加え、私どもの大学院化学専攻のプラス2年の大学院研究を通じてその理系スキルが養成されます。この化学コースのホームぺージの「進路・就職」のコーナーでは、私どものところの学部卒業生の7割が大学院に進学していることをデータで示しています。本学の大学院博士前期課程化学専攻を修了した院生の多くは、東証一部上場の製造業をはじめとする一流企業に研究・開発職として就職しています。また、教職に就く場合も、院卒の場合は、院卒資格である「専修免許(中学・高校理科)」を取得した上で就職しています。

有能な理系女子は就職難でも求められ、仕事と家庭を両立できる

 近年、産業界からは「有能な」理系女子はこの就職難の時代にあっても求められているのが現状です。また、よい就職先に就職した場合には、福利厚生の待遇もよく、またほかに代えがたいスキルを買われている(理系女子の院卒となると貴重です)以上、まわりから大事にもされるのでしょう。私どもの化学専攻を修了して企業で活躍しているOGたちの話を聞くと、企業内の「出産休暇」「育児休暇」等の制度を活用して、結婚・出産・育児のハードルを難なく越えていっているようです。かつての時代にあった文系就職の「結婚退社」とはほど遠い、実に自立した人間らしい生き方を追求できています。また彼女ら自身も仕事をやめるつもりは毛頭ないようで、アクティブな社会生活と女性としての幸せな家庭生活を両立させています。他の誰でもが持っているわけではない理系の高いスキルを生かして、やりがいのある仕事を続け、それを通じてしっかりした経済力基盤を維持しながら同時に幸せな家庭を営んで人生を生きてゆくことは、ことに現今のような流動的な社会情勢の中では賢い生き方に相違ありません。OGの彼女らの活躍を実にまぶしい思いで見ております。

化学コースこそ最善の勉強の場

 奈良女子大学の学生はすべて女性ですから、化学コースでは女性が直面する将来のライフステージにも注意を払い、理系女子の生き方について考える授業科目を開講しています(「化学キャリアセミナーⅠ~Ⅳ.全学年向け化学コース専門科目」)。その授業では、社会で活躍するOGや理系女性の方々を講義に招聘して学生に話していただき、学生に将来のことをいろいろ考える機会を持ってもらっています。このように理系女子にターゲットを絞った生き方を考えることができる科目を持っているのも、私どもが国立の女子大学であることのメリットであり、理系の学部であり、また、社会で活躍するOGを輩出してきた化学コース(旧化学科)であることのメリットであると思います。化学の優れた教育研究を行っていることはもちろん、このような理系女子に特化した利点は他の大学にはない長所ですし、その意味で理系を志向される、少しでも化学に興味がある女子にとっては、私どもの化学コースこそが将来のことも見据えて最善の勉学の場であると思います。

「化学」は実際的で実践的

 『理学部の化学コースへ行って、将来いったいどうなるのか?』というのが当初の問いでした。ここまで、自分の好きな理科の学問を化学コースで勉強した上で、このように理系スキルを生かして、本人の意思次第で将来にわたって仕事を続けてゆくことができるのだということを述べてまいりました。理系の人たち、中でも理系女性の生き方はマスメディア等であまり話題に上がりませんし、世の中にそれほどよく知られているわけでもないと思いますので、このようなご説明が多少なりとも皆様のご理解の一助になれば幸いです。ご関心やご共鳴をいただければ、またご令嬢の進路として国立奈良女子大学理学部化学生命環境学科の私どもの化学コース入学を選択肢に加えていただければ、私どもの望外の喜びでございます。

前化学専攻長 教授  衣川 健一

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