研究内容

進行中の研究

全反射を利用した界面敏感なラマン分光で固液界面のモデル膜中にある脂質やタンパク質と水溶液相にある分子の相互作用を捉える

概要

筑波大学在職時に開始した研究をもとに,奈良女子大学に異動後に着想して立ち上げた研究です。 固体と液体の界面(固液界面)には,基板支持脂質二重膜(Supported Lipid Bilayer:SLB)と呼ばれる膜を準備できます。 SLBは,固体表面で脂質二分子が向き合って平面に並んでできた膜で,細胞膜のモデルの一つとして用いられています。


本研究では,脂質と膜タンパク質を混ぜたSLB(混合SLB)を準備し,これらが相互作用しうる標的分子を水溶液相に加えた系を対象とします。 ここに界面敏感なラマン分光法を適用することで,固液界面のSLB中にある脂質や膜タンパク質が,水溶液相にある標的分子と相互作用したときに起きる構造や配向の変化を捉えることを目指しています。


現在は,混合膜を再現性良く準備する方法の確立や,そのスペクトルを精度よく測定するための分光装置の構築を進めています。


※本研究は,東京大学物性研究所の井上圭一先生との共同研究です。主に試料の準備や適した系をご提案いただくなどの面で協力いただいています。


全反射ラマン分光の概要
固液界面でレーザー光を全反射させたときに,溶液側のわずかな空間領域に生じた電場で界面近傍にある分子のラマン散乱を誘起する

構築した全反射ラマン分光装置
試作第二号です

全反射ラマン分光による液液界面現象の観測実現の試み

概要

最近取り組み始めた研究です。固液界面でなく,液体と液体の界面(液液界面)で起きる現象を観測する可能性を模索しています。 液液界面で起きる分子抽出の過程では,抽出される分子がまず界面に集まり,その後,別の溶液相へと移動することが想像されます。 この過程を,界面敏感なラマンで捉えるということを目標に進めています。


現在は,液液界面を測定するためのセルの試作,界面を安定に準備する方法の模索を行っているところです。


計画中の研究

原子力科学研究所のグループ,および,筑波大学の分光物理化学研究室(石橋研究室)との共同研究を進めています。 また,同志社大学や量子科学技術研究開発機構などの近隣の大学・研究期間の先生方との共同研究の可能性も模索・準備を進めています。

このほか,大学院生のときの指導教員(京都大学・寺嶋正秀 教授)の最終講義(2025年3月)に影響を受け,新たな試みを始めたいと日々着想を練っています。早く公開できるように取り組みます。