『界面活性剤,イオン液体,両親媒性高分子,金属ナノ粒子など
ソフトマターの分子集合体』に関する研究に取り組んでいます。

①新規構造のポリオキシエチレン系非イオン界面活性剤に関する研究

非イオン界面活性剤は、安全性、低刺激性、乳化性、洗浄性など種々の機能をもつため、化粧品や洗浄、食品などの幅広い多くの分野で用いられています。なかでも、ポリオキシエチレン(EO)鎖を親水基に有するEO系非イオン界面活性剤は、EO鎖とアルキル鎖の両鎖長によって親水性と疎水性のバランス(HLB)を自在に変えることができるため、多岐にわたる分野で使用されています。一般のEO系非イオン界面活性剤のほとんどは、アルキル鎖とEO鎖の両鎖長に分布があり単一な鎖長ではないため、各鎖長における物性を正確に把握することは困難です。そのため、分布をもたない単一鎖長のEO系界面活性剤を用いて物性を評価することは必要不可欠です。近年、我々は重合度分布のないEO系界面活性剤のEO鎖末端に分布のないポリオキシプロピレン(PO)鎖を導入した単一鎖長PO–EO系非イオン性界面活性剤を合成し、これらがEO系に比べて低い臨界ミセル濃度(CMC)や同等または高い界面活性を有し、低濃度の水溶液においてEO系と同様の会合挙動を示すものの、高濃度になるとEO系、PO–EO系において形成する会合体に違いが認められることを明らかにしました(S. Yada, Langmuir 33, 3794-3801 (2017))。現在は、PO鎖長の異なるものやメチル基およびエチル基をEO鎖の末端に修飾させたEO系界面活性剤について、さまざまな角度から物性を評価しています。また、優れた熱安定性や耐酸化性などの特徴を有し、化粧品や潤滑油などに用いられている多分岐鎖構造の高級アルコールおよび脂肪酸(日産化学工業(株)製ファインオキソコールⓇ)を用いて、2本の多分岐のアルキル鎖とエーテルまたはエステル結合を有する分岐2鎖型EO系界面活性剤を合成し、その界面吸着と会合体特性について検討しています。

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②環境負荷低減型界面活性剤の開発に関する研究

分子内に2つの疎水部と2つの親水部を有するジェミニ型界面活性剤は、かなりの低濃度で飽和吸着してミセル形成することが知られており、種々の用途に対して従来の界面活性剤よりも数十分の一から数百分の一の使用量で最大限の効果が期待されています。そのため、ジェミニ型界面活性剤は、環境や人体に対する負荷の低減に貢献でき、『環境適合型界面活性剤』として注目されています。我々はこれまでに、異種の親水基(カチオンとアニオン、カチオンとノニオン、カチオンと両性)を有するヘテロジェミニ型や異種の疎水鎖(炭化水素鎖とフッ化炭素鎖)を有するハイブリッドジェミニ型、アミノ酸を分子骨格に用いたアミノ酸系、糖鎖を親水部に用いた糖型、デンドリマーを親水部に用いたデンドリマー型など、さまざまな構造のジェミニ型界面活性剤を開発してきました。さらに、世界に先駆けて、分子内に3つの疎水部と3つの親水部を有するトリメリック型界面活性剤の開発も行っており、ジェミニ型界面活性剤以上に高い性能をもつことを明らかにしています。最近では、さらなる性能の向上や機能性の発現を目指して、新しい構造のジェミニ型ならびにトリメリック型構造の環境適合型界面活性剤の開発を行っています。

分子内に異種の親水基を有するヘテロジェミニ型界面活性剤の開発



規則的樹状高分子のデンドリマーにアルキル鎖を導入したTadpole型両親媒性デンドリマーの開発<準備中>



③新規構造の両親媒性イオン液体に関する研究

イオン液体は、イオンのみからなる物質であるにもかかわらず100℃以下に融点をもち、難揮発性や不燃性などの性質から環境負荷の低い溶媒として知られています。イオン液体は、カチオンとアニオンの組合せによって、融点や粘度などの物性を変えることができるため、水や有機溶媒とは異なる第3の溶媒として注目されています。我々は、2本のアルキル鎖長やスペーサーの構造を変えた四級アンモニウム系のジェミニ型両親媒性イオン液体の開発を行っています。ただのイオン液体ではなく、イオン液体の性質に加えて、界面活性剤の性質も併せ持ち、さらにはジェミニ型の特徴を兼ね備えた新しい概念の『ジェミニ型イオン液体』の創製を手がけています。また、近年、イオン液体を媒体とした両親媒性化合物の物性に関する研究が行われており、水溶液中と同様にイオン液体中においても会合体を形成することが報告されています。しかし、これらのイオン液体はプロトン性やイミダゾリウム系がほとんどであり、四級アンモニウム塩系イオン液体を媒体とした研究はほとんどありません。そこで我々は、新規に開発した四級アンモニウム塩系ジェミニ型イオン液体を媒体に用いて、単一鎖長ポリオキシエチレン(EO)系非イオンなどの界面活性剤の物性について検討しています。

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④X線・中性子小角散乱(SAXS・SANS)による集合体のナノ構造解析に関する研究

水溶液中で界面活性剤などの両親媒性化合物が形成する集合体の構造を調べるには、光散乱、X線小角散乱(SAXS)、中性子小角散乱(SANS)、透過型電子顕微鏡(TEM)、粘度、粘弾性などの方法があります。なかでも、SAXSやSANSを用いることで集合体の形状やサイズ、会合数、膜厚、水和数などの詳細な情報を知ることができます。また、界面活性剤水溶液の濃度を細かく変えて調べることで、集合体の構造の転移や共存状態を知ることができ、これらは界面活性剤を使用する産業分野でも有用な情報となります。我々は、数ナノメートルサイズのミセルの検出に有力な放射光施設SPring-8のSAXSを用いた界面活性剤分子集合体のナノ構造について検討を行っています。さらに、J-PARCのSANSと併用して、集合体のナノ構造を詳しく追及しています。

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⑤コロイド粒子を用いた環境汚染物質の除去に関する研究

ジェミニ型やアミノ酸・糖型などの環境適合型界面活性剤を用いて、液体および固体表面への吸着や水中での分子集合体、乳化、可溶化、金属ナノ粒子などの特性を調べ、これらの特性を活かした放射性物質や有機物などの環境汚染物質の除去に関する研究をコロイド・界面化学的な立場からアプローチしています。

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