「量子統計力学的分子シミュレーション」へのいざない

 

  「量子統計力学的分子シミュレーション」とは、古典(統計)力学を逸脱して、量子統計力学(ボーズ・フェルミ統計も含む)に従う量子多分子系のシミュレーションのことです(多分、私の造語)。特に、従来型のstaticな量子モンテカルロ・シミュレーション(径路積分モンテカルロ)を越えて、量子系の実時間動力学(ダイナミクス)の計算できる多分子シミュレーションのことを強調する意味で、そう呼んでいます。1994年に提案され、私自身も95年以来研究している「径路積分セントロイド分子動力学(CMD)シミュレーション」は、現在のところ、その動力学の計算のための唯一の手法です。
  2000年夏に、新潟の海辺の町で開かれた「分子シミュレーション夏の学校」で、この「量子統計力学的分子シミュレーション」について拙い講義をしました。そのテキストがここからPDFファイルでダウンロードできます。なお、著作権は放棄しませんので、引用の際はかならずクレジットをお付け願います。
  「Newton方程式」という古典力学の運動方程式を解くことによって「量子力学的観測量」である実時間相関関数を計算できるという、驚くべき手法が、CMDシミュレーションなのです。それは、90年代までに古典統計力学に基づいたMDの分野で開発されてきたテクニックの集大成の観があります。上のテキストは、このCMDシミュレーションに必要なテクニックについての講義テキストです。但し、実際の講義では、径路積分法の原理など、必要な物理についても講義しましたが、それらはこのテキストには含まれていません。成書を参考にして下さい。なお、CMDについては教科書的解説書はまだ世の中に出ておりません。1994年以降のJ. Chem. Phys.にでている論文や、私の業績をご覧下さい。