授業の概要 | 化学が取り扱う「物質」は原子や分子がアボガドロ数程度集合した体系である。このような多数個の分子の集団では、個々の分子固有の性質以外に、多数個集合することによってはじめて発現する性質がある。このような多数分子系の性質は一つには「熱力学」の考えによって説明されるが、実はそれだけでは化学的なイメージ、分子論的なイメージに欠けてしまう(例えば『内部エネルギー』とは何のエネルギーのことか?『エントロピー』とは一体何のことか?)。本講義で履修する「統計力学」の論理は、1個1個の分子の性質と多数個の分子集団の性質を結びつけ、熱力学的性質という「巨視的な」性質が現れる成り立ちをわかりやすく説明してくれる。それによって『エントロピー』『内部エネルギー』といった熱力学関数の意味がはじめて具体的にイメージできるようになるのである。 | |
学習・教育目標 | 内部エネルギー、エントロピーといった「巨視的な」熱力学量(それらはいつも多数個の分子の集団に対して述べられる)が、「微視的な」分子レベルに基づいた具体的なイメージとリンクするような理解を目指す。 | |
キーワード | 統計力学、熱力学量、アンサンブル、ボルツマン分布、分配関数 | |
授業計画 | 以下の項目を講義する。 (1)エントロピーのボルツマンの定義とその意味 (2)熱力学的エントロピー(通論で学習した定義)とボルツマンのエントロピーとの等価性 (3)ボルツマンの確率分布則 (4)分子のエネルギー・分子間力 (5)速度空間・位相空間について (6)分配関数について (7)正準集団について (8)熱力学第3法則の意味 (9)熱力学第2法則の意味 (10)自由エネルギーの意味と自発変化・平衡についての解釈 (11)分子の自由度とエネルギー等分配の法則 (12)気体分子運動論 (13)マックスウェル‐ボルツマン速度分布 (14)量子論に従う体系の場合について (15)フェルミ統計・ボーズ統計 | |
教科書 | 1. | 物理化学 第8版(下)16-17章、21章-1 アトキンス 東京化学同人 | |
参考書 | 1. | 熱・統計力学(物理入門コース7) 戸田盛和 岩波書店 | 2. | 物理化学 マッカーリ・サイモン 東京化学同人 | 3. | 熱力学・統計力学 原島鮮 培風館 | |
成績評価方法 | 統計力学の『論理の理解』とそれを使って『基本的な計算ができる』ことを問う。暗記は無用なことである。筆記試験を重視する。 | |
成績評価割合 (%) | 定期試験(中間・期末試験) | 小テスト・授業内レポート | 宿題・授業外レポート | 授業態度・授業への参加度 | 受講者の発表(プレゼン) | 出 席 | 教員独自項目※ | 95 | 5 | | | | | | |
※成績評価割合の 教員独自項目 | |
備考 | 化学科物理化学系講義科目(選択科目A群)。教科書はアトキンス第8版を用いるが第6版でもよい。テキストには1年次の「基礎化学1」で用いた教科書(戸田盛和)の後半もあわせて用いる。なお本科目は、数学の「統計学」とは関係ない。講義は板書中心で行う。毎回復習して、自分でペンを動かして紙に式を導出し直すことと、概念の意味が理解できるまで反復して考え続けるようにされたい。 | |
更新日付 | 2009/12/19 17:36:45 |