授業の概要 | 近年,工業化学,電子材料、医学,薬学等多方面での発展が著しい金属錯体は,無機化学,特にd-ブロックの元素の化学では中心的重要な役割を担っている。金属錯体はいわゆるウェルナー型配位化合物と金属-炭素結合をもつ有機金属錯体に分けられるが、本講義では両者を包括的に理解するための基礎的考え方を分かりやすく説明する。即ち、金属-配位子結合や金属錯体の性質を2つの理論的モデル,結合の静電モデルに基づいた考え方と分子軌道法にもとづいた考え方,で理解し、それぞれの利点を用いて金属錯体の構造、電子状態、物性、反応性に対する理解を得る。 | |
学習・教育目標 | 結晶場理論に基づいて金属錯体の立体構造や電子構造を体系的に学習し、ウェルナー型配位化合物の構造や性質を理解出来るようにする。また、簡単な分子軌道を用いた考え方を導入することにより、金属-炭素結合をもつ有機金属錯体の構造や反応性について基礎的理解を得る。 | |
キーワード | 金属錯体,配位化合物、有機金属錯体、結晶場理論,結晶場分裂パラメーター,電子スペクトル、磁性、金属-炭素結合,有効原子番号則,18電子則,有機配位子 | |
授業計画 | 第1回 金属錯体とは、ウェルナー型配位化合物と有機金属錯体 第2回 錯体の構造,代表的な配位子と命名法 第3回 結晶場理論と結晶場分裂パラメーター 第4回 結晶場分裂と錯体の立体構造 第5回 電子配置(高スピン、低スピン)とJahn-Teller効果 第6回 錯体の電子配置と電子スペクトル 第7回 錯体の電子配置と磁気的性質 第8回 錯体の反応(配位子置換反応) 第9回 錯体の反応(酸化還元反応) 第10回 配位子場理論と18電子則(有効原子番号則) 第11回 分子軌道で考える金属-炭素結合、π供与性配位子とπ受容性配位子 第12回 様々な金属-炭素結合 第13回 有機金属錯体の基本反応と触媒への応用 第14回 遷移金属錯体化学の現状と将来(小分子活性化、超分子化学、クラスター、生物無機化学、ナノ材料化学等への誘い) 第15回 試験 | |
教科書 | 1. | 無機化学』(上、下)4版,19-21章。また,講義資料をインターネットで配信するので各自ダウンロードすること(URL等の詳細については授業中に説明する)。 シュライバー・アトキンス,田中他訳 東京化学同人 | |
参考書 | 1. | 金属錯体の構造と性質 三吉克彦 岩波書店 | 2. | 有機金属化学 山本明夫 裳華房 | 3. | 基礎有機金属化学 中村晃編 朝倉書店 | |
成績評価方法 | 出席状況・授業態度,レポート,筆記試験を総合して評価する。 | |
成績評価割合 (%) | 定期試験(中間・期末試験) | 小テスト・授業内レポート | 宿題・授業外レポート | 授業態度・授業への参加度 | 受講者の発表(プレゼン) | 出 席 | 教員独自項目※ | 70 | | 10 | 10 | | 10 | | |
※成績評価割合の 教員独自項目 | |
備考 | 化学科無機化学系講義科目(選択科目A群)。連絡先:C棟C323室
参考書:J. Ribas, 『Coordination Chemistry』Wilet-VCH, 2008. | |
更新日付 | 2009/12/21 13:31:14 |