生命有機化学研究室

1 |質量分析法によるタンパク質の構造と機能の研究およびタンパク質考古学の創成

タンパク質は、遺伝的に決められた20種類のアミノ酸が、やはり遺伝情報で決められた順番に並んできています。タンパク質の「ひも」がどのような形に折り畳まれ、どのようにはたらくかもこの並び方で決まります。私たちは、最新の質量分析技術を使ってタンパク質のアミノ酸の並び方や分子全体の形を明らかにする方法について研究しています。その応用の一つが古代のタンパク質の分析です。牛乳や肉のタンパク質は放っておくとすぐに腐ってしまいますが、絹や膠(にかわ)のような繊維状のタンパク質は、千年以上経っても条件さえよければ「ひも」の断片の形で見つかることがあります。飛鳥時代の古墳から発掘された文化財に残るこの「ひも」の破片の分析によってその時代の文化や技術を知ろうとする研究に熱中していた時、古代にタイムスリップしたような不思議な感覚にとらわれたことがありました。

Annealed at 110℃

図1 タンパク質の酵素消化物の溶液(約10-5 L)を質量分析用の金属プレートに載せているところ。試料の汚染を防ぐため、会話は厳禁!細心の注意で実験に集中!

本研究室で開発されたイオン液体(上図、下層)は、水溶液(上層)から銅イオンを99.8%の高率で抽出することができる。

図2 古代の遺跡から出土した資料に含まれていたタンパク質の質量分析の結果、野生の蚕蛾のテンサンが作った絹を検出した。

2 |蛍光水銀センサーの開発

私たちはこれまで,キノリンを基本骨格としたセンサー分子の設計を行ってきました。キノリン骨格を有する化合物は蛍光特性,認識特性,脂溶性など多くの魅力的な特性が期待されますが,まだ研究例は少なく,センサー分子としてのキノリンの機能についてはまだ未開拓の点が多く残されています。私たちが最近開発したBQETは,Hg2+を添加することで蛍光増大を示すOFF-ON 型の応答を示し,メトキシ基を1つ導入した6-MeOBQETはHg2+の添加により短波長側で蛍光が消光し長波長側で蛍光が増大するレシオメトリック(波長移動)型,またメトキシ基を3つ導入したTriMeOBQETはHg2+の添加に伴い蛍光が消光するON-OFF 型のセンサーとなることが分かりました。BQETはHg2+に対して選択的なセンサーとなりましたが,他の2つの化合物は鉄(III)イオンにも蛍光応答したため,さらなる改善を行っているところです。

デンドリマー(親水部) 両親媒性デンドリマー アルキル鎖(疎水基)

図1 BQET誘導体の構造と水銀イオンに対する蛍光応答様式

ジェミニ型界面活性剤

図2 光で水銀を探す分子(イメージ図)



研究室風景

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