有機合成化学研究室

4 |高性能な遷移金属錯体触媒の設計と合成、環境に調和した新しい有機合成反応の開発

ターゲットにしている反応は「不斉炭素—水素結合活性化反応」です。金属錯体を触媒とする不斉合成反応、および、結合活性化反応は「21世紀の有機化学に求められている地球に負荷をかけることなく目的物質を合成する」のに不可欠な反応です。さらにこの2つの反応を融合した反応系を開発することができれば、複雑な構造であっても欲しい有機分子だけを無駄なく合成することが可能となります。しかし残念ながら、その開発は未だ道半ばといった状況です。そこで、私たちはこれまでとは違った新しい制御方法の利用が必要であると考え、自分たちで開発した配位子(Ind-P配位子)を用いて合成した「金属上に不斉源を有する遷移金属錯体」を新たに触媒として用いることを計画しました。現在は「不斉炭素—水素結合活性化反応」の開発を目指しながら、Ind-P配位子を有する遷移金属錯体の合成およびその反応性の解明、さらに、この錯体を利用した不斉合成反応や炭素—水素結合活性化反応の開発を行っています。

molecular wire

図1 3種類の不斉源が存在するInd-P配位子を有するイリジウム錯体

LUMINOUS Gold CHAINS

図2 不斉炭素―水素結合活性化反応

5 |環境への負荷が格段に低い有機合成触媒反応の開発、およびその基盤となる新しい遷移金属錯体の
創成と反応性に関する研究

環境低負荷型の有機合成触媒反応として、炭化水素類などを高付加価値有機化合物へと効率的に変換する反応の開発を目指して研究を行っています。例えば私たちはこれまでに、アルケンの鎖状共ニ量化による多官能性アルケンの高原子効率的な合成反応や、末端アルケンへの1,2-ジオールの位置選択的な求核攻撃を経る末端アセタール合成反応を、それぞれに適した遷移金属錯体触媒を用いることにより実現しています。触媒として働くこれら遷移金属錯体がキーマテリアルであり、新規触媒反応開発と並行して、特徴的な構造を有する錯体の創成を行っています。例えば10族遷移金属が硫黄によって架橋された環状構造を有するティアラ型錯体やその小分子包接錯体、2つのビピリジル基をフェロセン骨格で架橋した新規配位子bpyfを用いた複核錯体などをこれまでに合成しており、それらの反応性を詳細に調べることによって新たな触媒機能の開発を目指しています。

Reduction of CO2 under mild condition

図1 アルケン類の効率的変換反応

O2 Reversible Binding

図2 有機小分子(ジクロロメタン)を包接したティアラ型8核パラジウム錯体



研究室風景

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