物性物理化学研究室

1 |液晶,ガラス状態,イオン液体など中間相の物理化学的研究

ディスプレーや化粧品などで私たちの身近な存在である液晶は液体と結晶の間の相です。ここではそのような液体(または溶液)と固体の中間相(メゾフェーズ)を研究しています。今日実に多様な中間相が見いだされています。液晶よりずっと以前から人類の身近な存在であったガラス状態も構造的には液体である中間相で、基礎科学的な視点からはまだまだミステリアスな状態です。特に低分子で安定なガラス状態は元来起こりにくいのですが、比較的最近になって多く見つけられ、重要な研究対象です。そして最近急速に注目されている「イオン液体」も中間相の一種と見なすことができます。ここではこのような中間相を安定にとるユニークな化合物を新たに合成し、それらの特異な性質をNMRやX線吸収などの手法を用いて構造化学的な視点から解明するとともに、特異性を生かして分析化学や電気化学特性などに関連した機能性を引き出す研究をしています。

Annealed at 110℃

図1 上の化合物は、低分子ながら室温で安定なガラス状態を取り、さらに加熱によって、液晶ガラスという珍しい状態に転移する。(偏光顕微鏡写真)

本研究室で開発されたイオン液体(上図、下層)は、水溶液(上層)から銅イオンを99.8%の高率で抽出することができる。

図2 本研究室で開発されたイオン液体(上図、下層)は、水溶液(上層)から銅イオンを99.8%の高率で抽出することができる。

2 |界面活性剤,両親媒性高分子,金属ナノ粒子などソフトマターの分子集合体に関する研究

疎水部と親水部の相反する官能基を分子内にもつ界面活性剤は、さまざまな産業分野で用いられています。これら1疎水鎖1親水基型の界面活性剤のさらなる性能の向上および高い機能性の発現を目指して、2疎水鎖2親水基構造のジェミニ型界面活性剤や、樹状高分子であるデンドリマーにアルキル鎖を結合させた両親媒性デンドリマーなど、ユニークな構造をもつ両親媒性化合物を自ら分子設計・合成し、電気伝導度や表面張力などの物理化学的性質を調べています。また、これらの両親媒性化合物の水溶液中における分子集合体を動的光散乱や透過型電子顕微鏡を用いて調べ、SPring-8に設置のX線小角散乱、日本原子力研究開発機構やJ-PARCに設置の中性子小角散乱などの大型装置を使用して、集合体のナノ構造を詳しく解析しています。さらに、両親媒性化合物を保護剤として金属ナノ粒子を調製し、還元反応やラジカル消去反応などにおける触媒活性に関する研究も行っています。

デンドリマー(親水部) 両親媒性デンドリマー アルキル鎖(疎水基)

図1 分子内に異種の親水基(四級アンモニウム基とカルボン酸基)をもつヘテロジェミニ型界面活性剤の会合体特性(左はアルキル鎖長による会合体の転移・共存、右は形成したベシクルのcryo-TEM写真と互い違いの膜厚構造)

ジェミニ型界面活性剤

図2 本研究室で開発したTadpole型およびジェミニ型両親媒性デンドリマーと多疎水鎖多親水基構造の星型両親媒性デンドリマー: これらの界面吸着や水溶液中でのミセル特性について研究を行っている。

研究室風景

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