最近の研究概要

「径路積分セントロイド分子動力学(CMD)による量子多分子系の半古典ダイナミクス〜液体水素の集団励起の先験的予言・ボーズ/フェルミ統計へのCMDの拡張とその量子力学的基礎付け 」
このリンク では、私の行った量子液体(液体水素)のCMD計算が中性子実験の結果を1年前に予言していたことと、CMDという半古典的手法によってN体ボーズ系・フェルミ系のダイナミクス(実時間相関関数)を計算できることを解析的に証明したことを述べています。


 

この図は、私が1998年に径路積分セントロイドMDシミュレーションで計算した、液体パラ水素の動的構造因子 (液体の中の分子の集団的な運動の尺度になる)である。それ以前には、実験では1973年に不満足なスペクトルがたった1例報告されていただけであった(軽水素核の非干渉性散乱のため測定が極めて困難)。また、理論や計算による報告も、対象が「量子多体系」であり、「液体という乱れた系」であり、しかも「ダイナミクス」に関する物性であるため、当然 なかった(当然、径路積分Monte Carloのようなstaticな方法ではダイナミクスを計算できない)。しかし、上図のスペクトルを公表した翌年(1999年)、欧州で強力な中性子散乱実験が行われ(英国Rutherford Appleton LabとフランスのGrenoble)、その結果は1973年の実験結果にはあまり一致せず、むしろこのグラフのプロファイルに一致している ことが報告された。すなわち、1998年の私のこの計算は、実験結果を1年前に予言していた(その通りの実験結果が1年後に出てきた)。